物語は始まる

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「あ~、ようやく退院だ~」 昼の町並みを歩く小学生の少年の姿が在った。 説明するのも不要なまでに至って平凡を模倣とした少年――『皇 光太郎(すめらぎ こうたろう)』である。 だが、平凡な容姿とは裏腹に『めんどくさい』が口癖で、極度のオタクであるから一癖も二癖も兼ね備えている。 今、小学生の姿をしているが彼は元々は高校3年である。 理由あって今は小学生の体なのだ。 その理由の1つに彼が異世界から来たという事情が挙がる。 ここは彼の世界では『アニメ』として存在している。 題名は『魔法少女☆ミラクル』という何ともネーミングが痛々しいものだ。 そんな世界に飛ばされれば慌てるはずだ。 しかし、彼はむしろ嬉々として受け入れた。 お気に入りのアニメだからか、来れた嬉しさに感極まった。 でも全てが楽しいはずもなく、色々な騒動に巻き込まれた。 持ち前の『めんどくさい』を口癖にいくつもの事件を解決してたりする。 本人は『めんどくさいから早めに対処した』との談だ。 話を戻そう。 彼が小学生の姿をしている理由は『この世界』の主要キャラクターが全員小学生だから設定に合わせられたのである。 むろん、小学校に通っているのだが……1ヶ月程前に光太郎はいざこざに巻き込まれ、争ったのだ。 その争いの結果、全治1ヶ月という笑えない程のケガを負ったのだ。 つい30分前に突如医者から「君、退院してくれ」とか言われて、病院を追い出された。 国で弾圧された挙げ句に追放された民衆の気分を味わった。 急な事で連絡もできず、金もない。病院なので携帯が使えないので持ち込んでいなかった。 つまり……歩いて帰っているのだ。 帰ったらとりあえずは――あの病院を訴えてやろうと心に決めたのだった。
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