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愁香は琴音に手を差し出して、立ち上がるよう促す。
「はぁ……。ほら、掴まって。
魔法戦闘に遅れるわよ?」
「お、サンキュサンキュ。んぅ~よっこらせっと」
「親父臭いわよ、それ」
「掛け声でもなきゃ起き上がれないんですぅ~」
そのまま2人は、次の場所を目指して歩き出そうとする。
だがその瞬間、琴音の身体がストンッと崩れ落ちた。
「あ」 「え?」
「あらま、完全に脚に力が入らないや」
自分の太腿あたりを拳でポンポンと軽く叩きながら、苦笑交じりに言う琴音に、愁香は驚きを隠さなかった。
「どうやら本当に立てないようね……」
「疑ってたの?! それより、運んでくれると嬉しいな~」
「医務室に連れていってあげるわ。ほら」
琴音の潤んだ瞳での上目遣いは一切無視して、愁香は彼女に背を向けてしゃがみ込む。
琴音は自分の言葉を無視された事をあまり気にしていないようで、「おっ」と嬉しそうに呟きながら、もぞもぞと愁香の背中に乗った。
しっかりとおぶさっているのを確認すると、愁香は立ち上がり、琴音をおんぶして医務室まで歩き始めた。
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