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「さすが愁香、優しいときは優しいね」
「『ときは』ってどういう意味よ」
「いや~、それにしても極楽だねぇ。あ、もっと早く歩けない? いや、むしろ走るくらいの勢いで!!」
「却下するわ」
枷を外したかのようにはしゃぎだす琴音だが、愁香はそのほとんどを適当に聞き流していた。
それでも琴音は中々口を閉じない。
疲れているにもかかわらず、よくここまで話が出て来るものだと、愁香は疑いつつも感心する。
だが、さすがに3分を過ぎたあたりになってくると、愁香も耐えられなくなってきた。
「でさ~、そんときに」
「あんたね、そんなに元気があるなら置いていくわよ?」
「うなッ?!!!」
その言葉を聞いた琴音はハッとした顔になり、両手で自分の口を覆って途端に黙りこんだ。
急に琴音が動いたせいで一瞬バランスを崩しかけた愁香だが、すぐに体勢を立て直すと、琴音を抱え直し、再び歩き始める。
すると突然、琴音がプフッと吹きだした。
なにかあったのかと、琴音の方を見ようとした愁香だが、直後、
「おりゃりゃ~~!!」
首筋に悪寒が走る。
「~~~~~~ッッ?!!!」
琴音が背中側からギュッと愁香を抱きしめて、愁香のうなじ辺りに頬ずりをし始めてきたのだ。
そんな琴音に愁香は鳥肌を立てながら、摺り寄せて来る頬から逃れようと、必死に頭を動かす。
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