赤と銀

5/9
前へ
/9ページ
次へ
「愁香は首が弱点なんだもんねー?」 昔から、愁香は他人にうなじを触られるのが苦手だった。 しかも、運の悪い事に、それを琴音は知っていたのだ。 逃れようにも、背中におぶさっている琴音から逃れることなど出来る訳もなく、愁香は上を向く事でうなじを隠し、琴音の頬から逃れるしかなかった。 「ぉ、落っことすわよ?!」 声を裏返しながら愁香が叫ぶが、それを聞いた琴音は余計楽しそうに笑う。 「でも、落とさない。そんな愁香が大好きだ~!!」 「あんた本当に立てないのっ?!」 もはや悲鳴といった方が正しいような声で、愁香が叫ぶと、ずっとうなじを狙ってきた琴音が、電池が切れたかのようにピタリと停止した。 突然の事に愁香も驚き、恐る恐る振り返ると、琴音が眉間にしわを寄せ、いかにも不服といった顔をしていた。 「……えぇ~………、私まだ疑われてたの?」 「……そんな事で止まるのね」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加