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一体、私はいつからここにいるのだろう
生まれた時を覚えていない。
物心ついたときからこの何もない空間に一人でいる。
上も下も右も左も分からない場所。言葉で表すなら…何もない零の世界
そんな零の世界から時折どこからともなく男女の声が聞こえてくる事があった。遠くて聞き取りづらい事がほとんどだけど女の人の声はいつも同じ感じがした
「ん~?どうした?その子の事じっと見つめて」
あ…またあの女の人の声
でも今までで一番聞き取りやすい…
「…この子いいかもなぁ…うん、いいかも」
そしていつも変わる男の人の声…この声も一段と近くで聞こえる。
何の話をしてるんだろう?しばらく聞いていよう
「よし!んじゃあこの子にするかい?」
「ああ!ちょっと待って下さい…まだ心の準備が…」
「まったく…まだ迷ってるの?この期に及んで…決断力ないね~」
「いや…だって貴方がこんなデッカイ研究所で働いているなんて驚いたし、いきなりここにいるマイロイドどれか一人あげるって言われても…ハカセだって創りあげたこの子達を手放すなんてちょっとでも辛い所があるんじゃないかなって…そんな辛さをおさえてまで…」
「プチリオ君…なんで私がこのマイロイドを開発したか分かる?」
「…こういうロ…じゃなくてアンドロイドでしたね。失礼…アンドロイドにも感情があるって事を伝えたかったとか?」
「んー…若干正解入ってるかなー…正確に言うと人としての温もりを感じて欲しいからかな?やっぱり機械が中心のこのご時世『人間の操作下におかれる機械に意思とか感情をつけて何になる?』って馬鹿にする人もいるのさ。なんか私、奴隷みたいな扱いをするその口調に腹立ってさ。それだったら人間とまるきり同じ仕組みを機械にも施して人としての温もりを感じて頂こうじゃないのさ!って…」
「そうだったんですか…」
「プチリオ君、一人暮らししてるって言ったじゃん?たまに人恋しくなったりしてない?」
「そ、それは…確かに…」
「でしょ?だから私の創ったマイロイドが君の心の隙間を埋める事ができたら私にとってこれ以上の幸せはないんだ。だからさ…一緒に生活してあげてくれない?」
「…………分かりました。僕はこの子と一緒に暮らします!」
「よし!よく言った!それでこその男だね!…では!」
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