はじまり

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さて。 世界広しといえど、現在の俺のような体験をした人はまずいないだろう。 まさに、非現実的かつ非人道的な事態である。 非現実的といっても、特別なことではない。多くの人が妄想し夢見た架空の超能力、魔法。そのありきたりな非現実要素を操るという少女が目の前にいる。ファンタジー小説等では、うんざりするほどよくある状況だ。 ……だが、そんなありきたりな状況ではつまらない、とか言われても、実際そこに居てしまうのだから仕方がない。細かい理屈はこの際抜きだ。 魔法使いの少女が目の前にいる。まぁこれだけなら――ないとは思うが――何かの間違いか手違いで、偶然体験してしまった人が世界に一人や二人はいるかもしれない。なにしろ、ファンタジーではよくあることだ。現実に無いとは言い切れない。 しかし、俺は断言できるね。 その状況で、その少女に、インフルエンザの診察を行ったのは、俺の他にはいまい。
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