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普通に考えてみればわかる。
俺らのように、無限大な夢のあとの何も無い世の中で暮らす真っ当なニンゲンの抱く魔法のイメージからすれば、だいたい魔法ってのは攻撃系とか補助系とかに混じって、治癒系魔法があるはずである。怪我を一瞬で治したり、仲間の呪いを解いたりするアレだ。
そんな魔法がある世界の住人にしてみりゃ、インフルエンザなんか恐るるに足らず、何やら不気味な呪文を数秒唱えればたちどころに治してしまいそうなもんじゃないか。
しかし目の前の少女は、顔を真っ赤に火照らせながら、いかにもしんどそうな足取りで、俺の小さな診察所の門を叩きにきた。まぁ俺も医者の端くれだ、診れるもんは診る。見るじゃなくて診る。ここ重要。
話が逸れた。
ただ、なんで魔法使いの少女がいるのかとか、その少女がなんだってまたわざわざ町外れの小さな診療所にやって来たのかとか、そもそもなんで魔法使いだって分かるのかとか、色々疑問もあるだろう。まぁそのあたりは、ざっくばらんに言えば紆余曲折あったわけよ。察してくれ。
……というわけにはいかないだろうから、まぁおいおい、話すことになると思う。
ただ先に言っておくが、俺は人に説明するのはあんま得意じゃないんだ。本業でも、とりあえず「あなた急性上気道炎です」とかわかりにくく言って誤魔化すタイプだし。
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