第5話 変化

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私の顔を見た先輩が、 ハッとして早足で 私の方へ歩いて来た。 マズい、完全に見られた… 私は冊子を閉じて 袖で目をこすった。 「キリカさん…」 「大丈夫です!大丈夫…」 どれだけこすっても 涙が止まらなくて、 すごく焦りながら 何度も袖を目に当てた。 それだけ、彼の記事が 衝撃的でショックだった… 見つかったら…殺されちゃう。 あともう少しなのに… そう思うと余計に 涙が出てくる。 先輩が目の前にいるのに どうしても止まらない。 その時、 パシッ 目をこすっていた手を 突然先輩に掴まれた。 「…っ!」 そのままグイッと 引っ張られて、先輩に 強く抱き締められた。 「せっ…」 「泣かないで下さい。」 とにかくびっくりして 目を見開きながら 先輩の声を聞いた。 「訳は聞きません。だけど… 一人で泣かないで下さい。」 先輩の優しい声と温もりを 感じると、堪えていた 涙が溢れてきた。 「ふ…うっ…」 先輩の服をぎゅっと握って 顔を埋めると、私の頭を そっと撫でてくれた。 「…僕が側にいますから。」 先輩は最後にそう呟いた。 …その時、扉の向こうに シルクがいたことを 私は知らなかった… 「落ち着かれましたか?」 「はい…」 にっこりと微笑みながら 先輩が飲み物を持って 来てくれた。 あれから少しして 泣き止んだ私を見た先輩が、 「ちょっと、外の空気を 吸いませんか?」 と言って、図書館を出ると すぐ近くのベンチに 連れて行ってくれたのだ。 「ありがとうございます。」 飲み物を受け取って 笑顔で言うと、先輩は 安心したように笑い返した。 「…おいしい。」 私は飲み物を 一口飲んで呟いた。 甘くてあったかくて すごくホッとする味だった。 「ココアですよ。 キリカさんは甘いものが 好きだと伺ったので。」 「これって、人間界の…?」 「はい。女性の方に 人気だそうですよ。」 .
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