第1話 約束

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「何でそんなに怯えてんだ?」 「…怖かっ…から」 私が震えながら話すと 男の子は壁の後ろを見て ハッと息を呑んだ。 私も振り返って壁の隅から 顔を出すと遠くに小さな 松明の灯りが見える。 「…っ!!」 嘘、もうここまで追って…! さっきより震えている私を 見て、男の子がグイッと 腕を引っ張って 「こっち!」 と小さく叫んで走り出した。 私は腕を引っ張られながら 林の中を走り続けた。 私たちは大きな木のある 丘に辿り着くと、二人揃って 木にもたれて座った。 ぜぇ…ぜぇ…と 肩を動かしながら呼吸をする。 「あ…りが…と…」 「別に…」 林の奥まで走ったから今日は 見つかることはないだろう。 でもいつまで持つか… 「お前、何で追われてるわけ?」 だいぶ息が落ち着いた頃 男の子がいきなり聞いてきた。 私は一瞬戸惑ったけど 俯いてぽつぽつと話した。 男の子は私の目を見て 話を聞いてくれた。 「……一緒だな」 「えっ?」 「俺と、一緒だな。」 男の子は辛そうな顔で笑って、 話してくれた。 自分は堕天使で、髪が 白いから処刑されそうに なっていたこと。 長い間牢屋に入れられ、 ずっと掘っていた穴が開き 手錠と足枷(あしかせ)を 壊して逃げて来たこと… 私は胸が苦しくなった。 ただ髪の色が違うだけで処刑? いくら何でも酷過ぎる… 「…酷い…」 呟いたら涙が流れた。 男の子は私を見て 目を見開く。 「何で泣くわけ?」 「だって…酷すぎるから…」 「…そう思ってくれるのか?」 「当たり前だよ…!」 「そうか…」 男の子はそっと私の頬に 触れて、親指で涙を 拭ってくれた。 「初めてだ… そんな風に思われたの…」 男の子は優しく微笑んだ。 私はドキッとして 目を泳がせる。 あれっ…? 初めての感情に驚いていると 男の子は私の髪に触れた。 「髪、長かったんだよな?」 .
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