第1話 約束

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「うん…」 「酷い切り方だな…」 「…うん」 ドキドキして止まらない。 顔が熱くなってくるのが 自分でもわかる。 何…これ…? 一人で困惑していると、 男の子が突然ふわっと 私を抱きしめた。 「ちょっ…」 「10年…」 男の子は耳元で呟いた。 「10年後、俺の処刑が無効に なる日…またここで会おう。」 「えっ?」 「ずっと二人でいたら、絶対に 見つかる。だから、約束…」 するとと、遠くで ゴーン…ゴーン…と 鐘の音が響いた。 「…ちょうど今日だ。 10年後の今日、また君に 会えたら…」 男の子は肩に手を置いて そっと距離を離すと 私を真っ直ぐに見つめた。 綺麗な…青紫色の瞳… 私も目が逸らせなかった。 男の子の顔が近付くのが わかってドキッとして 強く目を瞑った。 額に柔らかい感触がして ゆっくり離れてく。 私は片目を細く開けて 前を見たけど、 「あれ…?」 男の子はどこにもいなかった。 「……約束…」 私は額に手を当てて そう呟いた。 .
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