第1章 才能

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「ライー。」 ふと自分の名を呼んだ 誰かの呼び掛けに足を止めた。 「また何か考えてるの?」 小走りで駆け寄ってきた彼女は 僕のすぐ近くまでくると 立ち止まってからこちらに向かい にっと笑ってみせた。 長い髪の間から覗かせる 澄んだ瞳を見ていると なぜだか胸がドキリと高鳴る。 僕は「ちょっとね。」と言って 再び足を動かす。 彼女はニーアといい、 以前に助けたことがきっかけで 今では数少ない 話し相手の一人である。 ここだけの話、 例の耳鳴りが知らせる危険は 自分のこと以外は知らせない。 つまり、彼女は 僕に迫った危険で 巻き込まれそうになり、 その事に気付いた僕が 彼女を助けたことで 親しい間柄になったのだ。
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