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1月、今年も世間ではインフルエンザが大流行している。
うちの病棟でも、患者さんの一人にインフルエンザが出た…。
どうやら、見舞いに来られた方の中にインフルエンザの人がいたらしい。
これが、悪夢の始まりであった。
最初にインフルエンザを発症した入院患者のAさんは、認知症があり、自分の病室がわからず、よく他の病室に入っては迷子になっていた。
そのため、常に看護師の目が離せず、担当看護師がどうしても離れなければならない時は、ナースステーションの中で雑誌を読んでもらうなどして過ごしていた。
それが、裏目に出る羽目になる…。
Aさんから始まったインフルエンザは、医師や看護師、他の部屋の患者へと一気に広がり、一週間後には医師・看護師計10数名、患者の中にも4~5名の感染者が出た。
もちろん、医師・看護師全員、事前にインフルエンザの予防接種は受けており、患者さんの中にインフルエンザが出た時点で、院内感染対策委員会にも報告し対策に乗り出していたのだが…。
最初の患者Aさんに認知症があり、症状が出るまで徘徊していたほか、看護師の中で研究発表を控え、過労気味な人が多かったことなどが原因として考えられた。
最大で看護師のうち1/3がインフルエンザや風邪に倒れた。
もちろん、残った看護師も常にインフルエンザの危険と隣合わせの状態。
看護師の数が減ろうと、患者さんの人数が減る訳ではなく、その負担は残った看護師に重くのしかかる。
この事態に、病棟看護師長(婦長)は総師長(総婦長)に他病棟からの看護師の応援を要請していた。
しかし、応援に来た看護師が、今度は感染する恐れがあり、そこから他の病棟に広がることを恐れたため、結局他の病棟からの応援は誰も来なかった…。
病院から公費で出されたタミフルを飲みながら、私たちは耐えた。
そして、インフルエンザで倒れた看護師が少しずつ復帰を始めた頃…
今度は、インフルエンザによる重症肺炎で運ばれて来た患者さんが次から次へと入院することになった…。
私は、この時ほど、この病棟は病院から見捨てられた存在なのだと思ったことはない。
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