看護師になるということ

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ナースステーションでカルテを書いていると、患者さんのご家族に呼ばれた。 『看護婦さん、看護婦さん!!早く来てっ!!!大変なのっ!』 あまりにも血相を変えた様子。 そのご家族は、その日、主治医から『いつ、どうなってもおかしくありません。もしもの時の対応(人工呼吸器をつけるかなど)をご家族で話し合っておいてください』との説明を受けたばかり…。 もしや急変!? 慌てて部屋に向かう。 すると『ようやく目が開いたんですっ!ほらっ!見てください。先生呼ばなくて良いんですか!?ウチの人の目が、ようやく開いたんですよっ!?』 私は患者さんに向かって声をかけるが、土気色をした顔に表情は無く… 新人の私でも分かる、状態の悪さ… 3台の点滴台には輸液ポンプやシリンジポンプがいくつも連なり、私の隣にはベッドサイドモニター(心電図モニター)が光っている。 目が開いたからと言って、依然として予断が許せる状況に変わりはない… 私は、素直に喜べなかった…。 ご家族にしてみれば、救急搬送されて以来、初めて目を開けた患者さんの変化に、わずかな希望を見つけたような気がしたに違いない。 看護師(私)に、一緒に喜んで欲しかったに違いない…。 でも…私はできなかった… これが、看護師になったということなのだろうか…。
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