屋上からの風景

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…どれくらい頭を抱えて丸くなっていたろう。 随分時間が経った。 辺りは暗くなってしまった。 ここでじっとしていても仕方ない。 混乱するのに脳が飽きたかのように、だいぶ気持ちの整理もついてきた。 俺はゆっくりと、また地上を見渡せるへりの方へと歩いていった。 ここら辺は繁華街だから、暗くなっても街灯で昼のように明るい。 俺は夜の街を見下ろしてみた。 予想通りだ。 地上では未だ“奴ら”がうろついている。 もう確定的だ。 あれがゾンビなのか何なのかわからないが、とにかく今地上はあの化け物達で溢れかえっている。 そして奴らは、俺みたいな普通の人間だけを襲う。同じ仲間は襲わない。 見る限り映像やゲームのゾンビと同じく、知能は低くウロウロ動き回ることしかできない。しかし力は強い。 うずくまりながら考えたのだが、どうもあの夕方の黄色い粉みたいなのが怪しい。 あれが突然ふりかかってきた時は、これが黄砂か、なんて思ったが、アレはウィルスとか細菌兵器の類いだったんじゃないか? 某国の侵略か、まさか宇宙人でも攻めてきたか? 実態はわからないけど、俺みたいに効果の無い人間もいるみたいだ。それとも時間が経つと俺も化け物になっちまうのか? 映画やゲームの主人公はこういう時焦って何も考えられないが、実際こういう状況になってしまうと、無駄に頭が回る。 しかし考えたって何もできない。 大切なのは、これからどうするかってことだ。 まずこの化け物達は、どこまでいるのか。 ここら辺一帯だけなのか、もしかして日本中がこうなのか。 まさか、世界中が… そうだ、インターネット。 俺はポケットから携帯を取り出した。
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