飼育員の手記

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Jan. 8/2xxx (Wed.) 天気:見えない また異動されたから慣習通り日記も新しいメモリに変えることにする。 場所は例によってわからない。極東ロシア、ってのは確かだと思う。寒いし。 職務内容は、何かよくわからんが、実験動物の世話係らしい。動物は苦手なんだが…… まあなんにせよ、戦争会社の実験動物、って時点で俺が世話する奴等の運命は知れてるから、一応御冥福を祈っておく。アーメン。 今日の夕食:フジ食品の二型レーションAとB。相変わらず不味い。 ─────────── Jan. 9/2xxx (Thu.) 天気:窓なんてありゃしない 昨日の日記を訂正しよう。 実験『動物』、ってのと奴『等』ってのは誤りだった。 女の子だった。イエローで背は俺の鳩尾くらいしかない、キュートな女の子。 所員の奴等がその娘を連れてきて、『コイツの世話がお前の仕事だ』とか言って、この部屋にマニュアルと一緒に押し込んで行きゃあがった。 彼女は今もこの部屋にいて、何故か二つあったベッドの内の扉から遠い方で寝てる。寝顔も襲いたくなるくらいキュート。 マニュアルによれば、俺の基本的な仕事は以下の通り。 ・一日三回の給餌(食餌はプログラムにて決まった量、物を厳守。場合により『ごほうび』の給与もあり) ・入浴時及び排泄時の監視 ・錯乱時の対処(支給のスタンガンを用いること) ・実験時及び待機時の心理安定補助 正直、この令文を読んで腹が立ったし、女の子を連れて脱走しようかとも思った。が、現在地も施設の規模もわからないのに脱走なんてまず無理だから諦めた。 で、女の子は連れてこられた時にはもう寝てて、本人についてもここについても聞けずじまいだったから明日聞こうと思う。 今日の夕食:鞄に入れといたクジュークリ土産のサーディンカレー缶と缶パン。やっぱり不味い。
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