一日の始まり

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私にとっては四国八十八箇所巡りも登校も変わらない。 まあ、八十八箇所所か四国にすら行ったことないんだけど。要するにそれ位辛いということだ。 避難場所だから高台にあるのか、高台だから避難場所にあるのかは分からないが、高台にあるせいで私は急角度の坂道を登らなくてはならない。 辛いものとは何度体験しても慣れず、いつも平等に私を苦しめる。 周りは私を見て心配そうに声をかけてくる。はっきり言って、そんなのは迷惑以外のなんでもない。常識が人並みにある私が本音を口に出来る筈がなく、ただ私は「大丈夫」とテンプレを弱々しい笑顔で返すだけ。 たまに思うのだが「駄目」と言ったら私をおんぶして連れて行ってくれるのだろうか? いや、まあ、言わないけどね。 鉛のように重たくなった身体を引き摺り、何とか教室の自分に割り振られた席に辿り着く。 毎朝のことだがもうちょっと何となくならないだろうか? ただこんなことを考えながらも何とかならないのは自分が一番よく分かっている。だって何年も前から同じことを考えている自分がいる訳で……。 「よ~」 いつものように自分が嫌になり始めたところに、いつものように声をかけて来るのは汗臭い男子生徒。 「相変わらず瀕死?」 この人は毎朝同じことしか言えないのか。 「……お陰様でね」 「お前が死にかけなのは俺のせいじゃないぞ」 「そうね。私が死にかけなのは私を弱い身体で産んだ両親のせいね」 「半分位はお前の体調管理の甘さが原因だろ」 「民主主義のこの国では50%あれば有罪確定よ」 「それだとお前も有罪になるぞ」 「病弱な女の子の挙げ足取って楽しい?」 「たった今すこぶる不快になった」 「つまり非を認める訳ね? いいのよ、死にたくなったら迷わなくても」 「死にたくなったらお前を殺す」 「無理心中なんてお断りよ」 「俺は死なないけど」 「なんで私を殺すのよ」 「鍛えてる自分をコロすよりは軟弱なお前を殺した方が楽そうだから」 「腹立たしいことに否定できない自分がいるわ」 みるみる不機嫌になっていくのに気分はめきめきよくなっていく不思議。 ここまでの会話をして漸く一日が始まる気がする自分が嫌だ……。
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