体育の時間

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体育。 それは私にとってはサッカーの実況中継と同じだ。見ている分には楽しいが、実際にプレイするとなったら何か違う。 まあ、私はサッカーの実況中継を見ても楽しいとは思わないが。この例えを話したところ「分かりやすい」という評価を得たので使い続けている。でも今日の体育はバレーだからサッカーの実況中継よりバレーの実況中継の方がよかったかも。 一応言うと私は別に体育を見学している訳ではない。ただ参加するのが億劫なだけだ。 「よ~」 そんな私に何時ものように声をかけて来るのは汗臭い男子。 「誰にも誘って貰えなくて落ち込んでるのか?」 私と違って健康的で体育の時間が一番似合っている男子は何時ものように失礼なことから会話を始めた。 「違うわよ。私が兎みたいなタイプに見える?」 「まあ、縄張り意識が強いって所は……ああ、でもお前性欲は弱そうだな」 「兎は寂しいと死ぬというのは嘘」という情報で挙げ足取ろうとしたら相手はそのことを知っている上に、何やら私が知らない兎の情報を知っていた。まさにやぶ蛇。えっ? 兎って性欲強いの? 「失礼ね。これでも人並みに生理はキテるわ」 「生理ってそういうものだったっけ?」 でも、素直にそれを認めると相手を調子づかせるからそことなく会話をシフト。 「潤滑油が血液に変わる日、それが生理よ。その苦しみから解放される為に女性は性欲に走るのよ」 「その発言は女性として大丈夫なのか?」 「因みに私は今日生理よ」 「誘ってるのか?」 「嘘よ」 「どっちが?」 「そろそろ嘘にも飽きたから話を変えるけど……」 「それはどっちも嘘ということか?」 「そういうことでいいわ」 「じゃあ、話を変えていいぞ」 「許可は求めてないわ。それで、私と違って体育が学校の授業で一番好きな貴方がこんなところで油売ってていいの?」 「別に体育が一番好きな訳じゃないぞ?」 「あら、意外。じゃあ、何が一番好きなの?」 「休み時間」 「模範回答ね」 「つうかお前も分かってるだろ」 「そうね。ただちょっと意地悪しただけ」 この男子は運動神経いいくせに球技が心底苦手なのだ。 「身体から離れたらどうしようもない」と言う主張は名言だと思う。 私が思い出し笑いを堪え、男子がそれを気持ち悪がったところで授業終了を告げるチャイムが鳴った。
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