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昼休み。
それは私にとっても何ら特別な例えもなく普通に昼休みである。
流石に休み時間に偏見は持っていない。普通にバックから弁当箱を取り出し、蓋を取っていただきます。
「よ~」
そんな攻め立てる箇所がない筈の私に、
「今日もヤギが食うような弁当だな」
これから食事をする相手に対して送る言葉とは思えない言葉を送ってくる汗臭い男子。
「全世界のベジタリアンを敵に回したわよ」
「お前は主義で野菜を食ってる訳じゃないだろ」
「それでも結果としてはベジタリアンよ」
「鶏のササミは食べるじゃん」
「ササミは肉じゃないわ」
「本気である前に正気か?」
男子は購買部で勝ち取って来たカツサンドにかじりつく。
正直購買部でパンを買うという行為に私は憧れている。だけどそれを話したら「夢は見ている時が一番楽しい」と宥められた。意味が解る分腹立たしい言葉だ。
「……ねえ」
「確かにこのカツサンドのカツには脂が殆どないが、このカツサンドは購買部を制した者に送られる勝者の証……一口でもやる訳にはいかんな」
「流石ね。そこまで私の意図を読み違えるなんて。ていうか勝者の証って、貴方ほぼ毎日買って来るじゃない」
しかも買って来ない日は「今日は肉の気分じゃない」とか言ってトマトサンドを食べているところを見るに、『買えなかった』んじゃなくて『買わなかった』だけのようだし。
「それは毎日購買部に群がる生徒を凪ぎ払って蹴散らしてるからな」
「貴方が言うとそれは洒落にならないわ」
「洒落なら嘘になっちゃうだろ」
「つまりやってるってことね」
「聞きたいことは?」
「話の反らし方下手くそ」
「ズバッと言うね」
「まあ、いいわ。それで……私が購買部に憧れてるのは言ったわね?」
「俺に宥められた夢か」
「私が購買部に憧れてるみたいに……貴方はお弁当に憧れたりするの?」
「人並みに。俺も好きで毎日購買部で戦いを繰り広げてる訳じゃないし」
「戦いを欲してるんじゃないの?」
「俺をどんなキャラだと思ってんだよ」
「意外だわ」
「そんなお前が意外だ」
「あと一つ」
「なんだ?」
「明日の気分は? また肉?」
「肉が続いたし……野菜かも」
「そう……ちなみに今のは本当に聞いただけ。私がお弁当を作って来るなんて展開にはならないわ」
「期待してないけど」
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