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親子二人は隣町へ徒歩で向かった。道中、Mは母親が袋にネギを入れて持っていることに気付いた。
「ネギなんかどうすんじゃい。マツタケがあるろう。」
だが母は黙って笑っていた。
しばらく歩くと料亭に着いた。Mは女将さんと思しき人に言った。
「あの、私を料理人として雇って貰えませんでしょうか。」
「今忙しいから、裏口から入って料理長のところいきな」
親子は裏口から料理場へと入って行った。忙しそうに立ち回る料理人の一人を捕まえて、問うた。
「あの、料理長を探しているのですが。」
「わしが料理長だ。」
「私を雇って貰えませんか。みやげにマツタケを持ってきました。」Mは頭を下げた。母もならった。
「おう、今ちょうど人手が足りなかったんだ。雇ってやるよ。」
「ありがとうございます!」Mはまた頭を下げた。母はもっと深く頭を下げた。泣いているようでもあった。そして言った。
「じゃあ坊や、マツタケとネギを洗おうかね」
二人は洗い場に立った。
Mは懐から布袋を取り出した。にんまりとして香りを嗅いだ。
妙にタバコ臭かった。
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