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4月某日くもり
私はいつも早起きだった。
でもその日はまた特別早起きだった。
「優夏…まだ6時前よ…?
バスは7時半だから
まだまだ時間あるわよ??」
私は黄色い幼稚園バックと
黄色い帽子をかぶって玄関の前に
座っていた。
「幼稚園いくの!」
この一点張り。
ああ…今思えばすごくお母さんに
迷惑かけたと思う。
ごめんなさい。
「まだ早いから」
「いーやっ!!もぅいくっ!!
早くあの子に会うーっ!!」
びくっ!!
「わぁーん!!!!」
私が大声で叫んだせいで
弟が泣きだしてしまった。
「あ~よしよしっ
晃史泣かないのっ
お姉ちゃんの声でビックリ
しちゃったねぇ~
よしよしっ」
「ぅわぁぁぁん!!!」
晃史は私より2歳下だから
この時はまだ2歳にもなっていなかった。
皆まだ幼い弟にかまいっぱなしで
私は二の次。
それが当時の私は気にくわなかったんだと思う。
「あーちゃんうるさい!!
嫌い!!!きらーい!!!」
晃史…ごめんよ?
姉さん嫉妬してたんだよ。
本当は嫌いなんかじゃなかったからね?
「き…ゃぃ…ひっくっ…
びぇええぇええん!!!!」
「ちょっ…!!優夏!!
謝りなさい!!!」
「!…いやっ!お母さんのバカッ!!!」
がらがらっ
お母さんに怒られた私は玄関を開けて家を飛び出した。
「ちょっ優夏!!?戻っておいで!!」
足が速かった私は
全速力でお母さんから逃げるように走っていった。
「嫌い!!嫌い!!大っ嫌い!!」
まるでエヴァ〇ゲリオンの
台詞みたいなことを叫びながら
半泣きの状態で走っていた。
「…ぅぅ─っ…ぅ?」
キョロキョロ…
「ここ…どこ??」
私は住み慣れたこの地区で
子供らしく迷子になっていた。
目の前には道路。
大きな家や看板が見えた。
ガサッ!!
「ひっ!…」
「にゃーっ」
「…にゃんこ」
時刻はまだ6時になったばかりで人気も少なくまだ
明るいとは言えなかった。
幼い私には
非常に怖い状況であった。
「ぅ…ぅぅ」
すでに緩みきっている涙腺からポロポロと涙がこぼれてきた。
「お…かぁ…さん…」
ああ…我慢してたのに。
堪えきれなくなってしまった。
「ぅわぁぁああぁん!!!」
「うわああぁぁあん!!!」
─……あれ?
泣き声がする。
私の声ともう一つ。
甲高い声が響いていた。
さぁ私、ゆっくり横を見て見ようか?
───…「!」
黄色い幼稚園バックをひっさげて
黄色い帽子をかぶった
可愛い男の子……。
「……」
「うゎぁあぁあん!!」
私の泣き声は
消えていた。
「にゃーっ」
『ここバス停だよっ』
猫が教えてくれた気がした。
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