バス停

2/2
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
4月某日くもり 私はいつも早起きだった。 でもその日はまた特別早起きだった。 「優夏…まだ6時前よ…? バスは7時半だから まだまだ時間あるわよ??」 私は黄色い幼稚園バックと 黄色い帽子をかぶって玄関の前に 座っていた。 「幼稚園いくの!」 この一点張り。 ああ…今思えばすごくお母さんに 迷惑かけたと思う。 ごめんなさい。 「まだ早いから」 「いーやっ!!もぅいくっ!! 早くあの子に会うーっ!!」 びくっ!! 「わぁーん!!!!」 私が大声で叫んだせいで 弟が泣きだしてしまった。 「あ~よしよしっ 晃史泣かないのっ お姉ちゃんの声でビックリ しちゃったねぇ~ よしよしっ」 「ぅわぁぁぁん!!!」 晃史は私より2歳下だから この時はまだ2歳にもなっていなかった。 皆まだ幼い弟にかまいっぱなしで 私は二の次。 それが当時の私は気にくわなかったんだと思う。 「あーちゃんうるさい!! 嫌い!!!きらーい!!!」 晃史…ごめんよ? 姉さん嫉妬してたんだよ。 本当は嫌いなんかじゃなかったからね? 「き…ゃぃ…ひっくっ… びぇええぇええん!!!!」 「ちょっ…!!優夏!! 謝りなさい!!!」 「!…いやっ!お母さんのバカッ!!!」 がらがらっ お母さんに怒られた私は玄関を開けて家を飛び出した。 「ちょっ優夏!!?戻っておいで!!」 足が速かった私は 全速力でお母さんから逃げるように走っていった。 「嫌い!!嫌い!!大っ嫌い!!」 まるでエヴァ〇ゲリオンの 台詞みたいなことを叫びながら 半泣きの状態で走っていた。 「…ぅぅ─っ…ぅ?」 キョロキョロ… 「ここ…どこ??」 私は住み慣れたこの地区で 子供らしく迷子になっていた。 目の前には道路。 大きな家や看板が見えた。 ガサッ!! 「ひっ!…」 「にゃーっ」 「…にゃんこ」 時刻はまだ6時になったばかりで人気も少なくまだ 明るいとは言えなかった。 幼い私には 非常に怖い状況であった。 「ぅ…ぅぅ」 すでに緩みきっている涙腺からポロポロと涙がこぼれてきた。 「お…かぁ…さん…」 ああ…我慢してたのに。 堪えきれなくなってしまった。 「ぅわぁぁああぁん!!!」 「うわああぁぁあん!!!」 ─……あれ? 泣き声がする。 私の声ともう一つ。 甲高い声が響いていた。 さぁ私、ゆっくり横を見て見ようか? ───…「!」 黄色い幼稚園バックをひっさげて 黄色い帽子をかぶった 可愛い男の子……。 「……」 「うゎぁあぁあん!!」 私の泣き声は 消えていた。 「にゃーっ」 『ここバス停だよっ』 猫が教えてくれた気がした。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!