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なんて。
どれだけ悩んでても、減るものは減るもので。
少し長い低音が腹部から聞こえてきた。
「……飯」
「部屋から出て来た息子の第一声がそれとは、父さんは悲しいぞ」
「ばーんーめーしー!」
一階に降りて、俺を待ってまだ食べないでいてくれた父さんに感謝しつつも、やっぱりちょっと荒んだ今は適当になってしまう。
いつもか。
とにかく、無言で素早くガツガツと掻き込んでいく俺を見て、父さんはどこか悟りを開いたような表情で語り掛けてきた。
「息子よ、悩みか?」
流石だよ父さん。
俺の考えてることなんてお見通しってワケ、か。
「……父さんは、なんかめちゃくちゃ悩んだこと、ある?」
「んー……」
年中無休でボケをかます頭を振り絞って思い出そうとして、数秒。
「母さんにプロポーズした時かな」
真顔でそんなことを言ってのける中年男性が居るなんて。
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