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「……玖条のコトには、触れてもいいのか?」
数学だろうか、式やら問題文やらが書き写されたノートに目を落としたまま、大して気にしてない風にそう訊かれた。
「……一つだけ、答えて下さい」
「内容にもよるな、どうだろうか」
「……知ってましたね?」
玖条光来が、意志の強い、ただの不登校とは違うコトを。
その原因が、あのオッサンだというコトを。
「小耳に挟んだ程度さ。君なら問題ないと判断したまでだ」
まるで、何処かのお嬢様が優雅に紅茶でも嗜んでいるかのような涼しげな声で、その口から事実が聞こえる。
「知ってて、何もしなかったんですか?」
「質問は一つだった筈だろう、朝倉君?」
今度はしっかりと俺の目を見て。
そこにほんの少し、鋭利な何かを宿して、俺を黙らせる。
「……はぁぁぁ、神楽坂先輩には勝てないなー」
「君に言われてもね……」
「全然問題ないなら、こんなに時間掛かりませんよ?」
素直に喋っておこう。
後が恐い。
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