377人が本棚に入れています
本棚に追加
「羨ましいよ、なんか」
そう言って役員さんは、何かを見ようとする目付きで、俺を見ていた。
「は、はぁ……」
「俺はお前みたいに、そんなに熱くなれないよ」
「……んぁ」
なんだ、何の話だ。
高校に入ってからは大人しくして問題は起こさなかった筈だ。
筈だって言うかさすがの俺でも問題ない事ぐらいわかる。
「玖条光来だっけ、頑張れよ」
「――あ?」
待て待て待て待て。
え、何なにナニ、神楽坂先輩は、話したのか、"玖条"の事を、この役員さんに?
いや、問題はないんだろうけど、じゃなくて、あるんだけど、待って、なんで――
ふと役員さんを見ると、もうその後ろ姿は階段を上り始めていた。
俺は、ただ何も考えられずに立ち尽くして。
「……行くか」
いつもよりも不安な気持ちで、足を動かした。
最初のコメントを投稿しよう!