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「今日1日で終わるかしら…」
「1日で終わらせる!
朝から、ボヤくなよ。」
「あ…聞こえてましたか?」
「聞こえてるよ。さっさと終わらせてくれよ。次の仕事がまってるからな!」
そう言ってきたこの人、私が組んでるバイヤー。
中原 隆也 ナカハラ タカヤ。
私より二年先輩にあたる。
仕事が出来て、社内でも期待されてる一人。
おまけに、カッコいい。
お店に中原バイヤーが顔を出すと、
スタッフが喜ぶそうだ。
婦人服を売っているので、店頭のスタッフがほとんど女性。
男性なんてホントに少ない。
本社に移動が決まった時、店のスタッフに羨ましがられた。
が、私には興味ない。
社内で彼氏を見つけようとは思ってないから。
付き合って、別れても顔を合わせなきゃならない。
それに、彼氏と仕事を一緒に…なんて、私には無理だと思っている。
「さて、やるとするか。」
軽く気合いを入れて仕事にかかる。なんとか仕事をやり遂げると、
中原さんから、待ってたかのように仕事を振られた。
気かつけば、就業時間になっていた。
他のアシスタントの人は、切り上げて帰っていく。
隣のデスクの麻美ちゃんも、帰る支度をしていた。
「秋華ちゃん、まだ終わらない?なんなら、手伝おっか?」
「ありがとう。でも大丈夫。麻美さんに手伝ってもらったら、中原さんに起こられる~」
「そっか、そっか。中原くん、厳しいもんね~。ま、頑張って!私は先に帰るから、お疲れ様。」
「お疲れ様。また明日~」
原田 麻美 ハラダ アサミさんは、
私にアシスタントの仕事を教えてくれた先輩。
中原さんと同期で、私より二つ年上。
学生の頃から付き合っている彼氏がいるそうだ。
「そろそろ私も帰るかな。って、誰もいない…?」
「俺がいるが、悪いか?」
その声は中原さんだ。
「いやっ!全然っていうか、全く悪くないです!!」
「そっか。で、終わった?」
「あ、はい。終わりました。書類は明日ご覧になりますか?」
「そうするよ。俺も帰るか。秋華、一緒に駅まで行くか?」
「じゃあ、ご一緒させていただきます。」
軽く笑ってみると、中原さんも笑って答えてくれた。
「秋華、このまま飲みに行くか?」
駅までの帰り道、中原さんに誘われたが、
月曜日なので。
と、断った。
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