一章

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血液は、アスファルトにまで染み渡っており、現場の空気は酷く冷え込んでいたそうだ。 男は、胸部を撃ち抜かれて即死だった。 死亡推定時刻は、午前零時前後。現場は、X地区の路地裏だ。表通りにある歩道から少し奥まった死角の位置に当たる。 死亡したのは、三ツ木博信。三十歳。 財布に入っていた名刺と保険証から名前と年齢が明らかになった。 財布から犯人の指紋が検出されず、所持金も抜き取られていなかったことから怨恨の線で捜査をすることに決定した。 「三ツ木博信は、二千七年六月に起きた倉木転落事件の容疑者だ。覚えているだろ?」 「はい。でも、当時は決め手となる証拠がなかったために釈放されたんですよね」
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