一章

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「そっちは、リカちゃん人形。子供用の着せ替え人形です。そっちは、テディベア。人形にも名前があるんですよ」 イサコも冷蔵庫の中を覗いて来る。 「普通にクマのぬいぐるみだろ。いちいち名前を付けるなって話。未だに馴れないんだよ。本当に生きているような錯覚に陥るんだ」 「案外、迷信深いんですね。ホラーの中だけですよ。そういうのって」 「ほっとけ」 赤石は、冷蔵庫の扉を閉めた。電気代も払われていないのか、冷蔵庫は機能を果たしていない。冷蔵庫も冷凍庫も人形だらけだ。本来入っている筈の食べ物がない。調味料の一本も入っていないのだ。異常であった。 節約家の赤石は、コンセントを抜きたかったが、現状保存のために踏み止まった。 その傍ら、部屋に並んでいる人形をイサコが熱心に眺めている。 赤石は、棚の上にある達磨に気付いた。
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