十章

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「複雑な事情の持ち主なんですよ。俺には大金持ちの息子としか話してくれません」 「そう、なんですか。礼儀の正しい子にはみえますけれど、あ、名前聞いてなかった」 赤石は、何も言わずに警視庁の捜査室に戻る桃磨を見送る。 「まあ、あの歳で、変な奴なんですよ。見掛けたら家に帰れと言ってあげてください。送りますよ。乗ってください」 赤石は、駐車場に移動し、イサコと智子を乗せる。  智子と別れた赤石は、イサコを実家まで送るために車を出した。 「では、お願いします」 普段は、男同伴だと冷やかされるのが嫌で断るイサコが、珍しく素直に車に乗ってくる。 「まさか、携帯で警部達に指示をすることになるとは思いませんでした」
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