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僕の反論にママがぱちぱちと目を瞬かせる。
「そんなつもりじゃないわ。だけど、お人形じゃなくてちゃんとした男の子のお友達と遊ぶのも大切よって……」
「男の子だって!」
僕は大仰にわめき立てた。
「ママ、僕が男の子達にどんな目に合わされたのかもう忘れちゃったの。またあんな風に乱暴されたりいじめられたりするくらいなら、僕はもう一生、学校へなんて行きたくないよ。ママはそんなに僕をフトウコウのヒキコモリにしたいの……」
僕が両手で顔をおおってわざとらしく廊下に泣き崩れる真似をすると、ママはかわいそうなくらいにうろたえながらオロオロとその場にしゃがみこんだ。
「まあ、ケンちゃん、まあ……ごめんなさい、ママ、そんなつもりじゃ……」
「そんなつもりじゃなかったらどんなつもりだっていうの。僕からお人形を取り上げたら僕はすぐに死んじゃうからね」
これは脅しではない。本気も本気、僕は大真面目だった。真剣さが伝わったのか、ママがギクリと顔を強張らせる。
「まあ、もちろんそんなことはしませんよ」
「本当に? 僕がいない間に勝手に部屋に入ったりしていないよね。もしそんな事したら……」
「本当よ。ママを信じてくれないの?」
「……信じるよ」
どうせママが嘘を付いても僕にはわかるんだ。
「ごめんねママ、疑ったりして」
僕はママを安心させるために急いで『いい子の笑顔』を取り戻して満面に貼り付けた。
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