第二章

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 先生、いつもお世話になっております。  ええ、はい、今日も息子の事で……。  あれからですか?  いいえ、前回の診察の時から進展はほとんどありませんわ。  それどころかどんどん悪化しているような気がするんですの……。  え?  以前と比べてずいぶん大人しくなったでしょうって?  そうですね。  先生の仰る通り、あの子から無理に人形を取り上げるのをやめて好きなようにさせてみましたら、暴れることもなくなって、今ではまた学校にも通うようになってくれたのですけど……。  でもあの子、あれから全然お友達とは遊ぼうともしないで、いつもまっすぐ家に帰ってきては、一日中、本当に一日中、朝から晩までお人形達の世話をやいてるんですよ。  ……いえ、お人形達というのは少し違うかもしれません。  どうやらあの子、なぜか私には必死に隠そうとしているのですけど、部屋に溢れそうな人形達の中でも特にお気に入りの一体があるみたいなんです。  先生もご存じでしょう?  昔から女の子に人気のあった、あの、リカちゃん人形。  ええ、リカちゃんです。間違いありません。  あの子は、健一は、リカちゃん人形が一番のお気に入りで、まるでそれが生きているみたいに、それも自分の妹のように思い込んで、毎日毎日、それはもう一所懸命にお世話をしているんです……。
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