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鉄は本当は不良なんかじゃなかった。
不運が重なった結果がこれだったんだ。
その後の話では様々なことがわかった。
赤い髪は寝てる間に銀司さんが染めた事。
眉毛も、赤い髪を見て不良だと思った美容師さんがサービスで剃ったこと。
目つきが悪いのは元から。
着る服は全て銀司さんのお下がり。
関西から郵送されてくる服も派手なものしかないので、仕方なく着ているという事。
鉄は兄から半強制的に不良のキグルミを着せられているようだ。
しかも強運のせいでそれに見合った行いになってしまう。
……かわいそうな奴だ。
そこまでは納得できた。
しかし、俺を納得させないことがひとつ。
「でもお前、おかしくないか?」
「何がやねん」
カレー皿に乗ったタコを端っこに退けながら、疑問におもった。
「関西最強、じゃなくて関東最強になれって…。
二代目を次がせるのはたしか関西最強の方だよな?」
流れる沈黙。
「そういやそうやな」
「って、なんとも思わなかったのかよ!!
自分の事だろっ?!」
依然とタコ焼きを頬張る鉄。
…アンタちょっとは疑問に思えよ。
でもそれにしてもおかしい。
自分の座をつがせたいなら、わざわざ関東を制圧させることなんてないのに…。
本人でもない俺が不思議に思ってもどうしようもないのだが、
疑問に思う気持ちは心の中で渦巻いたまま消える事はなかった―――…。
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