101人が本棚に入れています
本棚に追加
/101ページ
後ろには口を切ったのか、
口から血を流して悶絶する男。
前にはちらつかせていたナイフが当たったのか、
手首から腕にかけて肉が切り裂かれ叫ぶ男。
廊下にいた人間もその声に視線を向ける。
「うそ、倒れてるあの二人って
田辺さんと水町さんじゃない?」
「この学校でも有名なのに…!」
「それよりあいつのカバン見ろよ!」
「え?《八城 銀司》って…関西最強の伝説の男じゃねぇか?!」
「怖ぇ~…えげつないな…」
しかし青年は冷静だった。
溜め息をついて落ちた自分の荷物を、砂埃を払いながら拾い上げる。
彼の何にも例えづらい表情は、
彼自身が酷く苛立ち、
そして呆れている様に見えた。
「お…おい、まて!
八城 銀司…!
テメェいつかブッ殺すからな!」
獲物を逃がしまいと、ピアス男が叫ぶ。
その男の表情とは裏腹に、青年は気怠そうに振り向き、
なんともなかった様な表情で言った。
「お前、俺が銀司やと思とんか?」
最初のコメントを投稿しよう!