関西最強の男。

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後ろには口を切ったのか、 口から血を流して悶絶する男。 前にはちらつかせていたナイフが当たったのか、 手首から腕にかけて肉が切り裂かれ叫ぶ男。 廊下にいた人間もその声に視線を向ける。 「うそ、倒れてるあの二人って 田辺さんと水町さんじゃない?」 「この学校でも有名なのに…!」 「それよりあいつのカバン見ろよ!」 「え?《八城 銀司》って…関西最強の伝説の男じゃねぇか?!」 「怖ぇ~…えげつないな…」 しかし青年は冷静だった。 溜め息をついて落ちた自分の荷物を、砂埃を払いながら拾い上げる。 彼の何にも例えづらい表情は、 彼自身が酷く苛立ち、 そして呆れている様に見えた。 「お…おい、まて! 八城 銀司…! テメェいつかブッ殺すからな!」 獲物を逃がしまいと、ピアス男が叫ぶ。 その男の表情とは裏腹に、青年は気怠そうに振り向き、 なんともなかった様な表情で言った。 「お前、俺が銀司やと思とんか?」
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