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「それは良かった」
そう言う桜田門君の顔が、いつになく穏やかでかっこよく見えた。
いつもこうならいいのに。
ちょっと残念な気がしていた。
でも、うちの両親ときたら、本当は落ち着いてるどころの騒ぎじゃないかも。
だって、私が婚約したことで、大船に乗った気分になっちゃって、安心しまくっている状態だもの。
一体我が子をなんだと思ってるのよ。
「妃奈子様、到着いたしました」
運転手さんがドアを開けてくれた。
私が『妃奈子様』って言われるのなんて、おこがましいよ。
「すみません、妃奈子様って言い方はちょっと・・・」
「はあ・・・」
そんな私の問いかけに困惑する運転手さん。
すると、車の中から桜田門君が言った。
「倉田の仕事の邪魔すんなよ」
まあ、確かにそう言われればそうなんだけど・・・。
「わかったな、妃奈子」
「えっ?」
私が驚くと同時に、ドアがバタンと閉まった。
今、妃奈子って呼び捨てにしたよね、あいつ。
運転手さんの会話を聞いてのことだろうけど、それにしても、あいつ・・・・。
私は、走り去る車を見送りながら、新たな闘志を燃やし始めるのだった。
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