遺言

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「ありましたよ。弁護士の一ツ橋先生から」 ちょっと丁寧さを強調して言ってみた。 まあこんなんじゃあ、こいつには伝わらないだろうけど。 「迎えの車そっちに送るから、家で待ってろ」 「えっ、大丈夫よ。一人で行けるから。ご心配なく」 なによ、子ども扱いなんて止めてよね。 「ふんっ!」そっぽを向いて、私は再び掃除をし始める。 「人の行為は素直に受け取るもんだろ。じゃあ、そう言うことで」 用件だけ言うと、桜田門君は保健室のドアを閉めた。 おい、その言葉そのままあんたにお返しするよ。 なによ、バカにしてんの? って、もういないし・・・。 まったく、なんて奴だ。 私はそばにあったイスに深く座りこんだ。 すっかり掃除をする気も失せてしまった。 冗談じゃないわよ、もうっ。
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