遺言

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ほどなくして、ドアホンの音がなった。 「お迎えにあがりました」 母が玄関のドアを開けると、運転手さんが立っていた。 彼の向こうには、黒塗りの高級車が見える。 「今日はすみません。娘がお世話になります」 深々と頭を下げる母。 「よろしくお願いします」 父の声も聞こえる。 私も慌てて階段を下り、玄関へ向かった。 「お待たせしてすみません」 すると、運転手さんの後ろからゆっくりと桜田門凱が姿を現した。 その姿は、とても優雅で、まるでどこかの王子様のよう。 でもその正体は、女好きの変態男、プラス不思議君だけどね。 「お久しぶりです」 なんともさわやかなご挨拶。 なんだ、やればできるじゃん。 なのに、なんで私にはできないの? って言うか、久しぶりって、会ったの確か5日前だよ。 たったの5日ぶりで、これって変だよ。 「おお、凱君大きくなって」 「でしょう。私もそう思ったわ」 父と母のこの口ぶり。 どう考えても、以前から桜田門君のことを知っていたように聞こえる。 じいちゃんのことと言い、こいつのことと言い、私には知らないことだらけなのに・・・。 まあ、別にいいけどね。
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