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…俺は、いつから『俺』と言うようになったのだろう。
友人や親切からは、その一人称は似合ってないと、よく笑いものにされた。
以前のように『僕』の方が、しっくりくると。
そう言われる度に、何度も『僕』に戻した方が良いんじゃないかと、おどおどしていた。
でも、今はもう、何を言われても一人称を変えることはない。
だって俺は、彼女の傍にいると、そう決めたから。
「ユウ。」
無機質な声が、小さく俺を呼んだ。
彼女の声だ。
無表情のまま佇む、小柄な少女。
虚ろな目が、俺を映す。
嬢宮(じょうみや)ゆうあ。
人類であるべき最低条件を持つことなく、この世に人間として生を受けた、"人形"。
そして、俺の、初恋の人。
じゃあ始めようか。
今から俺が、どれほど君を必要としているか。
どれほど君を好きでいるか。
全てを、君に話そう。
大切な、君へ。
「ゆうあ。あのね…―」
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