121人が本棚に入れています
本棚に追加
俺のイライラはあいつの一言から始まった。
「上ピー、俺いま超いいギャグ浮かんだんだけど聞いてー」
そう言った田口に他の4人の視線が集まる。
コホンと咳払いをした田口は…
「右だ!左だ!上田!」
右を指差して左を指差して、最後に上田を指差した。
…入口出口と変わんねーギャグ、そして全く面白くない。
楽屋の空気が凍りついた。
思わず溜め息がこぼれる。
新曲のPVの撮影が終わったばかりの楽屋、今日の撮りは、N→-T→U→T→Kの順番だったのに一番最後の俺も終わったのに、なんでまだ誰も帰ってない?
その理由は聞かなくてもわかるけど…中丸は上田を待ってて、聖は田口を待ってた…そう考えたら納得できる。
「つまんねー」
「えー、そうかなー?」
「俺がすべったみたいだから止めろ」
上田の言葉に傷ついた田口は可哀想なんかじゃない…面白くないから。
「た、たぐちっ!今の…面白かった、ぞ」
聖はただフォローしたんじゃない、田口が上田にばっか絡むから嫉妬して…聖、そんなに田口に構ってほしいんだ。
「ほんと~?俺ってやっぱり才能あるのかなぁ」
「あるある!センスありすぎる!そのセンス分けてくれよ~」
…イライラする。
田口のナルシスト発言も聖の言葉も、イライラする。
「じゃあ帰ってからたっぷりレクチャーするよ~」と言う田口、最後に聖の耳元で何かを囁いていた。
聖はボンッと顔を赤らめて、トマトみたい…あ、俺トマト嫌い。
何を言ったのか聞こえなかったけど、田口が言いそうなことはだいたい予想できる。
.
最初のコメントを投稿しよう!