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「一つだけ確認したい。」
タケルはスカウトにいう。
「なんだよ。」
チッと舌打ちしながら、スカウトが返答した。
「金はいくらもらえるんだよ。」
スカウトは、ああ……と呟く。その辺の事を話していなかった事に漸く気づいたらしい。
「優勝すりゃあ、100万だな。」
「100万?たったそれっぽっちかよ。シケてんな。」
「馬鹿言え。シケてんのは、テメェの脳ミソだ。優勝賞金の他に食いっぱぐれがないようにしてやるんだよ。」
「一生か?」
タケルは、鋭い視線でスカウトを見つめた。
「お前がヘマしなきゃな。」
タケルは、口笛を鳴らしてニヤリと笑った。
「それなら心配いらねぇや。じゃあ初めるか。」
控え室に入っても別に大会用の着替えがあるわけではない。荷物置き場というところだ。
スカウトが出ていこうとするタイミングで、思い出したようにタケルはスカウトに尋ねた。
「なぁ、さっきの金は?」
「あれは賭け金だ。この格闘技大会は、賭けの対象になっている。」
つまり、殴り合いのショー・タイムを楽しみにしている輩がいることを示唆していた。
今回の仕事にその辺のことは、含まれていない。おそらく、後程クチナワがなんとかするのだろう。報告をする事だけでいい。
「分かった。」
そこまで考えると、タケルは頷いてスカウトが出ていくのを見送った。
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