彼の優しさ

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「待って…っ!」 マユは坂を転がるリンゴを追いかけていた。 リンゴはスピードを落とさず転がっていく。 やがて、坂が終わり、リンゴは先の壁にぶつかり、止まった。 「は…ぁ…、良かった…。」 マユはリンゴを拾い上げた。 気がつくと、路地に入っていた。 あの坂は、路地に続く坂だったのだ。 「早く総帥のところへ戻らなきゃ…。」 マユは先ほど下った坂を登ろうとした。 「!!」 マユは後ろの気配を感じ、振り向いた。 そこには…、 「グルルルル…。」 「なっ!」 狼がいた。 「(何でこんな路地に狼が…?今は武器は持ってないし…、逃げるしかない…!)」 マユは坂を駆け上がろうとした。 「ガァァァ!」 狼はすぐさま飛びかかり、マユの足首に噛みついた。 ガブッ! 「キャア!」 マユは噛まれてバランスを崩し、転んでしまった。 「このっ!離れろ!」 マユはそばにあった木の棒で狼を叩いた。 狼は痛みで足首を噛んでいた口を離した。 が、狼はすぐに体勢を整える。 マユは足首の痛みで立ち上がれない。 一瞬、恐怖が湧き出てきた。 「(襲われる…。怖い…、総帥…助けて…!)」 狼はマユ目掛けて飛びかかった。 「イヤァーーーー!ハルカーーー!!!」 マユはこの場にいない彼の名を呼んだ。
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