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男はしっかりと握り締めると、手を前に回し、ゆっくりと指を開いていく。
…カサカサカサ。
指の隙間から黒い物体が這い出し、猛烈な速度で腕をよじ登ってくるのが見えた。
『ひっ!ゴキブリ。』
突然の事態に、男は必死になって虫を払いのける。
同時に悲鳴を洩らしながら。
『しまっ…。』
慌てて口を押さえたが、もはや後の祭りだった。
隣の部屋から聞こえていた音がピタリと止まり、一瞬の間の後、スーッと襖が開かれる。
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