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あの日、紗香の容体を見守る山之内の元へ戻ってきた陽助は、明らかに様子がおかしかった。
今思えば、既に陽助という生物ではなかったのかもしれない。
その目は真っ赤に血走り、耳は先端がナイフのように尖り、口は耳元まで裂けていた。
おかしかったのは、風貌だけではない。
もし、正常という範疇が山之内の私見通りであるならば、彼の行動も言葉も、全てがその範疇を逸脱していた。
『プシュープシュー。』
部屋に入ってきた陽助は、呆然と立ち尽くす山之内には目もくれず、荒々しい息をさせながら、眠る紗香の元へと歩き始めた。
…近付けてはいけない。
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