母親「生存フラグ? 何よそれ、おいしいの?」

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 すかさず体を捻って、獣化したハロルドから飛び降りる。  そして、びっくりしてポカンとしているショタの口に綾鷹の飲み口を詰めた。無論、キャップは外している。 「犯すぞバーロー!」  そんなことをしている時間は残念ながら皆無に等しいが、せめて恐怖だけでも煽れたらと思い、半ば捨て台詞的に叫ぶ。  器官に異物が入って噎せ込むハロルドの腹を思い切り蹴って、くるりとUターンすると「じゃあなクソガキ! 風邪引くなよ!」と綾鷹で濡れているのを心配して逃げたかは定かではない。もう意識飛ぶくらい必死だったし。  とにかく、ワーウルフとやらから逃げ切れたのは追ってこないことからも推察できる。  俺勝ったおwwwwwwwwwwwwww諦めて死亡フラグ建てまくらなくてよかったwwwwwwwwwwwwwwwwwww 「で、ここどこなのよ……」  目の前はアーケードっぽい。  人通りが多く、第一印象は皆がそれぞれの連れと笑い合っている平凡な商店街。  ただ、欝なのか知らないがフードを被っている無口そうな人間も多々いる。胸の膨らみで辛うじて男性か女性か分かるが、男性が大半を占めているようだった。しかし皆が皆、胸に同じバッジを付けている様は、はっきり言って異様だった。  俺の横を通って、一組の男女(当然ながら二人ともバッジ装着済み)が商店街へと入っていく。誰が入っても断らないんだな、とか開放的な空間に対して感心していると、突然後ろから腕を拘束された。何かこんなのばっかだな、この世界。 「……何のご用でしょうか」 「不法入国の容疑で、貴方を一旦拘束させて貰いました」  俺が少々不機嫌になって後ろにいる誰かに問い掛けると、意外と若い男性の声で返事が来た。耳元でイケメンボイス発するの止めろよ泣けてくるだろ。 「否認なら収容所でどうぞ」  由々しき事態だった。入国審査等を受けた覚えなど無いので、きっと俺は本当に不法入国したのだろう。  というかあの森がこの国の所有地だったんなら、入国審査をした覚えがないのも頷ける。あのクソヤブ、何て所に飛ばしやがったんだ。
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