母親「生存フラグ? 何よそれ、おいしいの?」

4/27
前へ
/44ページ
次へ
「ダァァァァァァァァァァァァァァァァァ……あれ?」  医者の掛け声と共に気合いの咆哮をあげるが、そこはもうさっきまで居た世界ではなかったらしい。  うふふ。何か、ジメジメした森の中っぽいです。そして―― 「グルルルルルル……グァヴァッ!」  死ぬ、っぽいです。  日本狼を大きくしたような生物が今にも飛び掛かって……言ってる間に来たぁぁぁぁぁぁぁ! 「無理っ! 無理ですって! いくらなんでも勝てねえよとっつぁーん!」  俺は必死に後方へ方向転換して逃げ惑った。死ぬ。わりと本気で死ぬ。 「いけませんよハロルブ!」  誰かを呼ぶ少女の声が聞こえる。幼い感じだが開いた訳ではなく、むしろ閉鎖的な印象を受ける声だ。  デカ狼略してデカミは、その叱咤を受けて「クゥン……」と悲しげに鳴く。  俺が不思議に思い後ろに振り向くと、そこには同い年ぐらいの可愛い女の子と、五歳ぐらいの鋭い目付きの男の子がいた。ただどちらも特徴的なのは、頭の上に付いた犬耳と腰の部分から生える尻尾だ。……あれ、デカミは? 「ハロルブ、人を襲っちゃダメじゃないですか。もし怪我でもしたらどうするんです?」 「だってこいつ、転移してきたんだぜ!?」  少年が俺を指差して訴える。ていうか、か…… 「可愛い! 獣耳超萌えるんですけど!」 「うわっ!?」  俺はタックルするんじゃないかってぐらいの勢いで、言い合っている二人に近づき、後ろから纏めて抱き締めた。少年の方が驚いて声をあげる。うわあ尻尾モフモフするわー。 「はっ、離して下さい!」  恥ずかしいのか嫌なのかは分からないが、少女が逃れようとして腕をがむしゃらに振るう。  そういう仕草も可愛いです。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加