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「ダァァァァァァァァァァァァァァァァァ……あれ?」
医者の掛け声と共に気合いの咆哮をあげるが、そこはもうさっきまで居た世界ではなかったらしい。
うふふ。何か、ジメジメした森の中っぽいです。そして――
「グルルルルルル……グァヴァッ!」
死ぬ、っぽいです。
日本狼を大きくしたような生物が今にも飛び掛かって……言ってる間に来たぁぁぁぁぁぁぁ!
「無理っ! 無理ですって! いくらなんでも勝てねえよとっつぁーん!」
俺は必死に後方へ方向転換して逃げ惑った。死ぬ。わりと本気で死ぬ。
「いけませんよハロルブ!」
誰かを呼ぶ少女の声が聞こえる。幼い感じだが開いた訳ではなく、むしろ閉鎖的な印象を受ける声だ。
デカ狼略してデカミは、その叱咤を受けて「クゥン……」と悲しげに鳴く。
俺が不思議に思い後ろに振り向くと、そこには同い年ぐらいの可愛い女の子と、五歳ぐらいの鋭い目付きの男の子がいた。ただどちらも特徴的なのは、頭の上に付いた犬耳と腰の部分から生える尻尾だ。……あれ、デカミは?
「ハロルブ、人を襲っちゃダメじゃないですか。もし怪我でもしたらどうするんです?」
「だってこいつ、転移してきたんだぜ!?」
少年が俺を指差して訴える。ていうか、か……
「可愛い! 獣耳超萌えるんですけど!」
「うわっ!?」
俺はタックルするんじゃないかってぐらいの勢いで、言い合っている二人に近づき、後ろから纏めて抱き締めた。少年の方が驚いて声をあげる。うわあ尻尾モフモフするわー。
「はっ、離して下さい!」
恥ずかしいのか嫌なのかは分からないが、少女が逃れようとして腕をがむしゃらに振るう。
そういう仕草も可愛いです。
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