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少女が一方的に罵声を浴びせている内に、俺は忍び足でジリジリと後ろに下がっていく。
樹の陰で二人から死角になる場所で、ゆっくりゆっくり……「待ってください!」「ひぃっ!?」
急に声が飛んできたので、びっくりしてすっとんきょうな声を上げてしまった。
「な、何でございましょうか?」
「逃げないでくださいよ。その、あの……」
俯いて恥ずかしそうに人差し指同士をくっつける少女。うん、素直に可愛いよ? でも近寄るかどうかは別。
「……嫌ですッ!」
俺はくるりと百八十度回転すると、全速力で駆け出した。
あんなのと関わってたら確実に死ぬわっ!
――――
「で、逃げたと。怖かったんですね?」
「はい……」
シュンとなって答える。結局あの後、一秒と経たない内に後ろからのしかかられて捕まってしまった。胸が当たるとか、自分の命の前ではどうでもいいことだと知った。
今はショタの方が簀巻きにされた俺を担いで、少女はその横を歩きながら俺に質問している。ああ、俺、祭壇とかに生け贄として置かれたりするのかな。
草生やす気力もないです……。
ゴールに絶望しか見えない。むしろ絶望が俺のゴールな気さえする。自分の砕ける音とか、今にも聞こえてきそうだ。
畜生。クソヤブが「異世界に行ったな? もう、帰れないぞ」って言ってるのが浮かんできて笑いそうになったじゃねえか。
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