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入り混じった空気。
にさんかたんそと、さんそ。ちっそも混じってる。
僕らはその中で、さんそだけを取り入れ、にさんかたんそにして吐いている。
人混みでは、にさんかたんそだらけ。みんな死んだような表情で、通り過ぎていく。
僕が死んだら、誰か悲しむのかな。
僕は、突っ立っていた。雑踏の中で。
右手は赤く染まり、点々と服に水玉模様。真っ赤な刃物。付着した肉。
目の前には、無様に転げている中年男。脇腹を押さえ、かすれた息を吐いている。
ああ、またにさんかたんそが。
どうしてこうなってまで、にさんかたんそを吐くんだろう。
さんそは必要なのに、簡単に蹂躙する人間。
僕も、人間。だけど、選ばれた人間。無駄な人間を排除するために生まれた、善良な人間。
「救急車を呼べ!」
「おい、警察を!」
「きゃああぁぁ!」
「おとなしくしろ!」
うるさいな。
でんしゃから出てくる度に、悲鳴とか罵声とか怒声とか。
お前らはどうしてそんなに、うるさいんだ。
消してやる。
「うわ、来るな!」
「早く逃げろ!」
「うわぁぁぁああ!」
また……一人。
「ぎゃっ」
二人。
「ひゃあっ!」
三人。……ぷっ。
あっははははは!
面白いなぁ!
どうしてそんなに逃げるんだい?
かいだんから転げ落ちてまでさぁ!
あっははははは!
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