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ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
ごめんなさいお母さん。僕、もう悪いことしないから。お母さんを困らせないから。だから許してください。
たばこを押しつけてくるのは、やめてください。
熱湯をかけるのは、やめてください。
木刀を持つのは、やめてください。
お父さん以外の人を連れてくるのは、やめてください。
変な薬を飲ますのは、やめてください。
ごはんにどくを入れるのは、やめてください。
「うるさいんだよ! クソガキが! あんたなんか生まれてこなけりゃよかったんだよ!」
やめてください。ごめんなさい。ごめんなさい。
「なんだよその目。私が育ててんだよ! いい加減わかれよ! てかもう死ねよ!」
お母さんごめんなさい。だからもうぶたないで。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
目の前に、赤い人間がいた。顔は歪んでて、僕の知ってた人間じゃなくなってた。
そのままどこかに行ったかと思ったら、ほうちょうを持ってきた。
「もううんざりなんだよ! あんたみたいなのを世話するのは!」
歯をむき出して、ほうちょうを振りかざす。
僕は転がった。痛んだ体を動かして、知らないうちに転がっていた。
畳に突き刺さるほうちょう。埃とともに舞い上がる狂気。
「よけてんじゃねーよ!」
両手を使って、必死に畳を押す。それに合わせて、体が後ろに進んだ。
しばらくして、背中に硬い感触。逃げられないように、壁が捕まえてきたようだ。
「お母さん、ごめんなさい」
僕は謝った。悪くないのに謝った。
でも赤い人間は、醜く笑ってほうちょうを振り上げた。
「じゃあね、クソガキ」
そう言い終わる前に、振り下ろされたほうちょう。
お母さん、笑ってた。
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