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「あのね、言いたいことがあったら僕に言ってくれる?」
決して大きな声じゃない。
だけど、たったその一言でその周辺だけ静まり返った。
騒がしい食堂のはずなのに、それは異様な光景で・・・・・・。
「彼女の傷つけるような言動にはきっちり返させて貰うからそのつもりでね」
優しい口調とは正反対の内容。
「それからついでに。・・・・・・西野さん、だったね」
「は、はいっ!」
西野さんと呼ばれたのはさっき、陰口の叩いていた集団の中にいた一人で。
「真咲さん以外と付き合う気は無いから、あの手紙は破棄させてもらうよ」
「――っ」
彼女は顔を真っ赤に激昂させて。
「ちょ、ミサ?!」
友達の制止を振り切って食堂から走り去っていった。
「・・・・・・お見事」
そう手塚が言えば、凌はにっこり微笑んで席に。
「手塚さんに褒められるなんて、心の底からうれしいよ」
「厭味だって気付けよ」
「琢磨はうがった見方をするんだね」
「全くだわ。このあたしが厭味を言うような女に見えるの?」
「なんなんだよっ、お前らは!」
そんな会話を、美穂はただ唖然と眺めていた。
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