もっと・君に伝えて・・・<キスよりもっと>

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インハイ前と言うこともあって、練習はハード。 「あぁ、くそっ!体力がもたねぇ!!」 寝転がるコータに「はい」とタオルを差し出す。 「サンキュ」 「ん、頑張って」 そう言うと、コータも「よっ」っと体を起こしてまたコートに。 「あのさ、美穂ちゃん」 脚を止めて振り向くコータに「ん?」と首をかしげる。 「あの話、無かったことにしていい?」 『あの話』がどの話か分かるから―― 「うん」 そう答えうると、コータの顔は渋いものに。 「もう喋ったのか、あの猿」 「うん」 「でも、パンくらい買いに行くから」 「うん」 「友達って言うのは続行な?」 「当たり前だよ」 笑ってそう答えるとコータは「よしっ!」とコートに走り出した。 ボールの音もシューズの摩擦音もせわしなく聞こえてくる。 厳しい練習の中、誰一人として泣き言を言わず、ボールを追いかけていた。 .
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