もっと・君に伝えて・・・<キスよりもっと>

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「どこも冷房が無いから暑いけどね」 そう言って彼が開けたのは旧校舎のドア。 そこは鍵も掛けられてなくて、自由に出入りが出来る。 「奥に図書室があってね。昔の図書が今でも置かれたままだから」 そんな説明に「そう、なんですか」と呟いて彼の後を付いて歩いた。 校舎の一番奥、そのドアを開けると、 「あ、涼しい」 非常階段。 日陰になってって、けれど遮るものは無いから風が吹き抜ける。 「じゃ、貰ってもい?」 「・・・・・・返品は不可って言いましたよね?」 我ながら可愛くない台詞だと思うのに、 彼は「ありがとう」と爽やか過ぎる笑みを見せる。 「・・・・・・お弁当って温かくないし、やっぱり学食のほうが」 「美味しいよ」 「・・・・・・先輩ってお世辞がうまいですよね」 「合宿の時も全部唐揚げは君が作ったんだね」 「・・・・・・」 「毎日じゃなくてもいいから、また食べたいな」 「・・・・・・今度はお茶も持ってきます」 そう答えると「ありがとう」と、それは素晴らしい笑顔を添えて美穂に伝えた。 .
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