もっと・君に伝えて・・・<キスよりもっと>

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こんな日々を一週間も過ごせば夏休み。 だけど、 「インハイ決めたからね。うちは優先的に体育館を使用できるよ」 そう凌が言ったとおり、毎日がバスケで埋め尽くされる。 それこそ、朝から晩まで―― 「あの、だから毎日送ってくれなくてもっ」 「いいの、これは俺の充電だから」 二人きりの時はほとんど一人称が『俺』に変わってしまった凌。 「来て」 誘われるのは少し道を逸れた所にある小さな公園。 「だ、だからっ」 「それともここでキスしたい?」 少し意地悪な笑み。 それすらも爽やかに感じるのはきっと夕日のせいだ。 そんななことを思いながらも、繋がれた手を振り払うなんて出来なくて、 美穂の心臓はドンドン速度を増していく。 もう7時。 こんな時間に子供の影なんてない。 勿論、人影すら。 そこにある大きなくすのき。 その影に引き込まれて。 「充電」 夕方と言ってもまだ蒸し暑い。 なのに、 抱きしめるこの腕を振り払えないのはどうしてだろう? 「こっち向いて」 この声に、逆らえないのはどうして・・・・・・? 降ってくるキスを拒めないのは、 きっと――。 .
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