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ゆっくり表示されるエレベーターの動きが恨めしい。
早く早く!
そう念じながら1Fのボタンを押して閉のボタンを何度も押した。
軽快な「チーン」という合図とともにエレベータから飛び出して、ホテルの外へ。
街路に植えられた椰子の木。
その下を歩いているのは――
「鳴海先輩!」
美穂の声に、暗い人影が振り返る。
「あぁ、君か」
サラサラな髪を潮風に靡かせて、見せる笑顔は清々しい。
「君かじゃありません!こんな時間にどうしたんですか?」
駆けよってそう言うと、彼は浮かべた笑みを少し困ったように歪めた。
「うん、散歩でもしようかなって」
「・・・・・・どうして?」
変に心臓がドキドキする。
「少し考えたくてね」
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